2011年3月11日金曜日

札幌交通事故物語 第一話:ダイスケ

ダイスケはひどく疲れていた。

携帯のアラームの音は聞こえていたが、起き上がって携帯を取りに行き、
それを止める気力は彼にはなかった。

このままもう一回 寝てしまいたい・・・

ダイスケは布団を頭まですっぽりとかぶった。

テレビを付けたまま寝てしまったのだろう。
朝のニュースが聞こえてきた。

今日は3月11日、札幌の交通事故が多発しているという特集だった。
今年が始まって3ヶ月目にして、もうすでに262件の交通事故が発生している。
うち、死亡者数は6名だそうだ。

まだ3ヶ月なのに…
いや、今年が始まってすでに3ヶ月が経過してしまっている。
来年度には新入社員が入ってくる。

何もかもがダイスケにはどうでもよかった。
今の仕事に興味が有るわけでもない。
金のため、ひいては生活のためにただのうのうと生きている。
そんな感じだ。
充実感も達成感も何も無い。
今の彼女と結婚を考えているわけでもない。生涯ずっとこのまま?

携帯のスヌーズ機能で、アラームが再び鳴り始めた。
ダイスケは思考を止め、ゆっくりと布団から起き上がった。
テレビは、札幌の交通事故のニュースから天気予報に変わっていた。

つづく