2011年3月22日火曜日

札幌交通事故物語 第三話:ダイスケ

残業中、彼女から携帯メールに受信があった。

「今日、会いたい。」

とのこと。彼女は絵文字を殆ど使わない。
その素っ気無さが魅力でもあった。

でも、ここ最近のダイスケは、季節の変わり目のせいか気分はいつも重たい。
彼女からのこんなメールにも心浮かれることはなかった。

付き合って来月で1年が経過する。
年齢的に、お互いそろそろ結婚を考えなければなないのだが、
彼女からその話を匂わせるようなことはなかった。
会いたい時に会い、美味しいご飯を食べて、最近のお互いの話をし、
次の約束もしない。喧嘩もしない。つかず離れず、そんな関係だ。

それが居心地よくて、一緒にいるんだろうな。

ダイスケには時々、冷めた第三者の目があって、
その第三者がそう言っていた。

彼女が「この人」ではないと。


そう思うと、ダイスケは不思議と胸が痛んだ。
彼女のことを思う気持ちはもちろんあるのだ。
今日は早い目に残業を切り上げて、彼女に会いに行こうと思った。

外は、まだ雪が降っていた。
気温がそれほど低くないせいだろう、道は溶けた雪でグチャグチャだ。
仕事を終えたダイスケは、車を走らせた。
溶けかけの雪にかなり足元を取られる。
ワイパーは最大限だ。

今日のこの道が、ダイスケの運命を大きく変えることになるとは、
その時のダイスケも、彼女も、第三者でさえも予測してはいなかった。