2011年3月17日木曜日

札幌交通事故物語 第二話:ダイスケ

札幌は3月も終わりだというのにまだ雪が降っていた。


気温が温かい時の雪は、結晶同士がくっついて大きな雪の塊になる。


桜の花が散っているみたいだ、
ダイスケはそんなことを思いながら車を走らせていた。

札幌の春は遅く、桜の開花も本州に比べて一ヶ月遅い。

ダイスケの自宅から職場までは車で20分だ。
彼は毎朝、この道を車で通って通勤している。
一般道を使用すれば信号に捕まってしまうが、
裏道を使用するので20分で通勤できるのだった。

ダイスケはこの道をよく知っている。

ダイスケは一人暮らしだが、実家は目と鼻の先にある。
彼は、この道をランドセルを背負っていた頃から通っていた。


信号のない裏道。一軒家の多い閑静な住宅街で、見通しはあまりよくない。
ある一軒家の庭には大きな桜の木が植えてあって、幾度とない春を
この道の桜と共に過ごしてきた。

急に込み上げてくる郷愁は、
フロントガラスににじむ雪の花のように溶けては降り続けるのだった。


春はもう近い。