2011年3月24日木曜日

札幌交通事故物語 第四話:マキ

大通公園付近のカフェに、マキの姿があった。

マキは窓辺のカウンター席に腰をかけ、暗くなった窓の外の車の流れを眺めながら
湯気の出たコーヒーをすすった。

マキの趣味はカフェ巡りだ。
密かに札幌のカフェに関するブログを書いている。
会社の人にも、友達にも内緒だった。

会社のお昼休みに、パソコンで札幌のカフェを検索して、
仕事帰りに検索したカフェに寄って、
家に帰ってブログを書く。
それがマキの日課だった。

我ながら地味な趣味だと思った。

でもいいんだ。何気にブログは人気があって、アクセス数もまぁまぁある。
継続して記事を書くことがその秘訣だと思っている。
見えない誰かと繋がっている。
マキはそれが嬉しかった。

携帯電話の時計を見たら9時を過ぎていた。
家に着くのは9時半過ぎか。少し長居しすぎたみたい。

マキはカフェを後にした。
トラフィックは帰宅する車が群れをなしている。
雪が降っているので道がびちゃびちゃで歩きにくい。

でも、外の雪が、街の灯りに照らされて、綺麗で、
いつもなら地下鉄に乗るところだが、歩いて帰ろうと思った。

なぜだかわからないけど、その時はそうしたいって、思った。

ipodで音楽を聞きながら、雪降る喧騒の中を歩いている自分は、
なんだか現実からかけ離れている感じがした。

だから、後方の車のライトには気づいていたけど、
特に何も思っていなかった。

次に目覚める、その時までは。

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